西(姉妹)

 妹は、ついに故郷に帰れなかった。
 樹木の間から、ウメは西の空を仰いだ。
「五人きょうだいでのこったのはワシひとりか」
 報せを受けたのは、告別式が済んで七日後のことだった。団地の自治会が執りおこなってくれたらしい。遺品整理の際にウメの住所が判ったそうだ。
「最期まで身寄りがないと思われとったんか。かわいそうになあ。だがワシも、そんな遠くまでよういけん。ここでかんべんしてくれ」
 するとその呼びかけに応えるよう、手前の山の斜面から一条の靄が立ちのぼった。
「そうか、帰ってきとったか」ウメは合わせかけた手をおろし、笹薮を分けながら峪側に歩みでた。「そら、気がつかんで悪かった」

 ざっと何かがすべる音と同時にキジが飛んだ。笹原に呑まれたみたいにウメの姿は見えなくなった。
 もう一条の靄が、峪間を去って同じ雲にまぎれた。

画像

(平谷村, Olympus-S, G.Zuiko 4.2cm F1.8, 1010.65MB/1024MB)

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